大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和44年(人ナ)1号 決定 1969年7月10日

請求者 佐々勝仁

被拘束者 甲野太郎

拘束者 警視庁立川警察署長 野原正

主文

本件請求を棄却する。

手続費用は請求者の負担とする。

理由

請求者は「被拘束者甲野太郎を釈放する。」との裁判を求めその請求の理由を別紙添付(一)の「人身保護法第二条②に基く違法拘束救済の請求」と題する書面及び別紙添付(二)の請願理由補充書記載のとおり主張した。

よって按ずるに、≪証拠省略≫を総合すると、被拘束者甲野太郎は昭和四十四年七月二日午後零時二十五分東京都立川市砂川町千二百三十二番地の八通称「砂川反戦塹壕」入口附近において立川警察署員により器物毀棄罪の現行犯として逮捕され、同日午後零時四十分立川警察署に引致された上同署に拘束され、次いで同月四日午前九時器物毀棄、「暴力行為等処罰ニ関スル法律」第一条違反の容疑により身柄共東京地方検察庁八王子支部検察官に送致され、同日同支部検察官の勾留状の請求により七月五日東京地方裁判所八王子支部裁判官小野淳彦の発布した被拘束者に対する「暴力行為等処罰ニ関スル法律」第一条違反の被疑事実に関する勾留状により同日午後二時五分から代用監獄としての立川警察署において拘束され現在に至っていること及び右勾留状記載の被疑事実は別紙添付(三)記載のとおりであることが認められる。

ところで請求者の主張は要するに、東京防衛施設局が設置した有刺鉄線が張られた柵は同局の管理外の市道に恣意的になしたものであり、被拘束者が右の柵の木杭を引抜き押倒しただけでは木杭と有刺鉄線等の資材の財産的価値が失われたわけではないから何等犯罪を構成せず、従って本件拘束は法律上正当な手続によらないで被拘束者を拘束しているものというにあるようであるが、前記勾留状記載の被疑事実は被拘束者の行為が明かに「暴力行為等処罰ニ関スル法律」第一条違反罪を構成しないということはできないから、拘束者が右勾留状の執行として被拘束者を拘束しているのは法律上正当な手続によって被拘束者を拘束しているものというべきであって、請求者の主張は採用することができない。

以上のとおりで本件請求は理由のないこと明白であるから、人身保護法第十一条の規定により審問手続を経ずにこれを棄却すべきものとし、手続費用について同法第十七条の規定を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 浅賀栄 裁判官 岡本元夫 鈴木醇一)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例